足の痛み捻挫(ねんざ)外来(第1話「足の痛み捻挫(ねんざ)外来」の紹介と自己紹介)
こんにちは、スポーツ医学科医師の服部惣一(はっとり そういち)です。「足の痛み捻挫(ねんざ)外来」を担当しております。6回シリーズであるこのコラムで治療内容について説明させていただきたいと思います。
今回のコラムでは「足の痛み捻挫(ねんざ)外来」を立ち上げた経緯ならびに自己紹介をさせていただきます。私は2020年9月までの約1年間アメリカのペンシルベニア州にあるピッツバーグへ留学する機会をいただきました。ピッツバーグでは超音波診断装置(エコー)を使った最小侵襲手術(手術のキズがほとんど残らない手術)を開発してきました。捻挫の後に足の痛みが続く方や捻挫を繰り返す方、アキレス腱や足の裏が痛くなる(特に朝や運動後に)方を対象とするこの治療を、日本の患者さまにも是非受けていただきたく「足の痛み捻挫(ねんざ)外来」を始めました。
自分自身は中学・高校・大学と競技レベルでスポーツを行い、現在もマラソン・ラグビーをプレーする自称アスリートですが、ケガに悩まされた期間が長く、腰椎分離症(ようついぶんりしょう)、腓骨(ひこつ)の疲労骨折、種子骨障害(しゅしこつしょうがい)、大腿四頭筋肉離れなどなどを受傷しました。選手生活の多くはグランドの端っこでリハビリをしながら、他の部員たちの練習を眺めているというものでした。
現在も肘関節のネズミ(ベンチプレスをすると痛くなります)、ハムストリングス肉離れ(長い時間運転しているとお尻が痛くなります)、繰り返す捻挫である足関節不安定症(デコボコした道で走るとすぐ捻挫します)、足底腱膜症(走り過ぎると足の裏が痛くなります)と付き合いながらスポーツを楽しんでいます。このようなバックグラウンドがあったので、医師になりスポーツ医学に進んだのは自然な流れでした。
自身がラグビーをやってきたので、医師になって研修医を終えると、ラグビーチームにチームドクターとして携わりました。平日は病院やクリニックで働き、週末はチームドクターでスポーツ現場に行くという生活でした。「スポーツ現場でも病院やクリニックのような医療を選手に提供したい」と思っていた私は、エコーを使うようになりました。エコーは、ラグビーのグランドを含めどこへでも持っていくことができて、そこで正確な診断・治療を可能にして、ケガをした選手を安心させることができます。そのようなエコーに私はどっぷりハマりました。エコーには妊婦さんや新生児にも安心して使える安全性がありますし、CTやMRIのように放射線を浴びたり、長い撮影時間が不要です。スポーツ医学科主任部長の大内洋先生がすでに運動器エコーの第一人者として亀田におり、エコーは最新の機種が自由に使える環境にあったので、毎日診察後に自分で自分にエコーをあてながら勉強しました。
スポーツドクターとして現場にでる一方で、整形外科医として手術も大好きでしたので「エコーを使うことで、手術をより精度が高く安全なものにできるのではないか?」という課題が浮かび上がってきました。2014年頃から学会や研修会でエコーを使用した手術(エコーガイド下手術)について、大内先生やスポーツ医学科部長代理の山田慎先生とともに発表し始めました。そこで発表してきた手術の一つに足首の繰り返す捻挫に対する手術があります。ピッツバーグでスポーツドクターとして働いている先生の目にこの手術が留まり(自分も売り込みましたが…)「この手術をピッツバーグでもっと開発しよう」という話になりました。そして経営陣にもご快諾をいただき、ピッツバーグ行きが決まりました。当初は2019年の夏から1年間の予定でしたが、ラグビーワールドカップ日本大会でドクターを務めることとなり、ワールドカップ決勝でもドクターを務めました。ワールドカップが終了した翌々日の11月5日から家族とともにピッツバーグに滞在し、2020年10月から亀田に復職し「足の痛み捻挫(ねんざ)外来」を立ち上げました。
次回からのコラムでは、「足の痛み捻挫(ねんざ)外来」の治療内容をピッツバーグでの留学生活を交えて説明していきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
文責:亀田総合病院 スポーツ医学科 服部惣一
(2021.3.1作成)