骨折を連鎖させない!骨粗しょう症とその予防(骨組織と骨粗しょう症)
2022/11/15
骨折の中でも、わずかな外力で生じる骨折(脆弱性骨折(ぜいじゃくせいこっせつ))を経験した人は骨粗しょう症による骨折を繰り返すリスクが高いことがわかっています。高齢期を迎えた方が骨折を繰り返すことなく、健やかな日々を過ごしていただけるよう、今回から3回にわたって骨粗しょう症とその予防についてご紹介します。
骨組織
骨は体を支え運動をつかさどるという骨格としての働きがありますが、他にも血液を作る造血器官としての働きやカルシウムなどのミネラルの貯蔵庫としての働きなど、様々な重要な働きをしている臓器です。
体の成長とともに骨も成長を続け大きくなります。そして10代後半で体の成長が止まると骨の成長(伸長)も止まり、骨の量(骨のカルシウムの量)は20歳前後で最大となります。また、骨というと「硬い」というイメージが先行しますが、骨にはコラーゲン線維も多く含まれていて、硬いだけでなく「しなやかさ」も兼ね備えているため、骨に伝わる衝撃に耐えることができるわけです。
骨の成長は20歳前後で完了しますが、その後も骨の新陳代謝(古い骨が吸収されつつ新しい骨が形成される)は続きます。骨組織の新陳代謝は思いのほか旺盛で、全身の骨は5~10年で作り変えられると考えられています。
骨粗しょう症
骨の新陳代謝は「破骨細胞(はこつさいぼう)」(骨を破壊する細胞)による骨吸収と「骨芽細胞(こつがさいぼう)」(骨を形成する細胞)により維持されますが、この際に起こる骨吸収と骨形成のバランスが崩れて「骨吸収>骨形成」(骨吸収が優勢)となると「骨密度」(カルシウムの量)が低下します。また、骨組織に含まれているコラーゲン線維のしなやかさが、加齢や生活習慣病などの影響で失われると骨がもろくなります。
骨粗しょう症とは骨密度が低下したり、骨がもろくなることによって「骨折しやすくなった状態」のことを言います。国内の患者数は約1,280万人(男性300万人、女性980万人)と推定されており、一般的に女性ホルモンの低下した閉経後の女性に多く、そのほとんどを高齢者が占めることを考慮すると、70歳以上の高齢女性の50~60%以上が骨粗しょう症であるといえます。
次回は、骨粗しょう症による脆弱性骨折と骨折ドミノについてご紹介します。