知ってスッキリ!おしりの悩み(痔核)
2018/9/15
はじめに
「直腸肛門外来」をご存知ですか?消化器外科のなかでも、痔や便秘、便失禁といった良性の肛門疾患を診療しています。外来担当医は日本大腸肛門病学会の専門医である、角田明良と高橋知子です。
これから半年間にわたり、直腸肛門外来が扱っている疾患についてご紹介していきます。第1話は肛門の病気で最も多い「痔核(じかく)」の話です。
痔核とは
痔核は世間でいう、「いぼ痔」のことで、肛門の疾患でもっとも頻度の高い病気です。痔核は、長さ3~4㎝の肛門の上部にできる内痔核と下部にできる外痔核に分けられます。
主に手術の対象になるのは内痔核です。内痔核は細かい血管の集まりが「こぶ状」になったもので、大きくなると出血の原因になります。さらに大きくなると肛門の外に脱出し、痛みを伴うことがあります(図1)。
痔核の誘因は何ですか
痔核発生の誘因は、長期にわたる排便時の「いきみ」です。便秘がちの人に多い病気であることもそれを裏付けています。いきみに伴って肛門を支える組織が弛んで、痔核の脱出につながると考えられています。
内痔核の内科的治療は何ですか
過度にいきまないで排便をする習慣を身につけることが基本です。便が硬くて出にくい方は食事を見直すことが必要ですが、それで効果が無い場合は緩下剤を内服することも考えるべきです。出血に対しては坐薬を処方してもらうと有効です。
どういう内痔核に手術をするのですか
緩下剤や坐薬などの内科的治療で出血や肛門外の脱出が治らないときに手術を考えます。脱出する内痔核を指などで押し込む必要がある方や、常に肛門外に脱出している方は手術の適応です。とりわけ、内痔核を指で押し込む方は、脱出する度にトイレへ行かなくてはならない煩わしさから、手術を希望される方が多いようです。
どのような手術ですか。痛くない手術はありますか
- 1 .出血のみや脱出が軽度の場合は、硬化剤を内痔核に注射する手術を行います。手術後の痛みはほとんどありません。
- 2 .脱出する内痔核を指などで押し込む必要がある方は切除する方法と、切除しない方法(硬化剤の注射+直腸粘膜を縫い縮める方法)(図2)があります。切除する方法は手術後に痛みと出血がありますが再発は少ないようです。切除しない方法は手術後に痛みと出血がほとんどありませんが、再発は切除する方法よりやや多いようです。
- 3 .常に肛門外に脱出している方は切除する方法を行います。
入院期間はどのくらいですか
手術のために行う麻酔は通常、脊椎麻酔です。麻酔後はすぐに自立歩行ができませんので、どの手術も最低1泊2日の入院が必要です。手術後の痛みが大きい場合には2泊3日になることがあります。
退院後の通院はどうなりますか
退院後1週間または2週間後に外来受診していただきます。その後1~2回の受診が必要で、全体で2~3か月を要します。
手術をしなければどうなりますか
当然のことですが、内痔核の症状が続くことになります。また、脱出する内痔核を指などで押し込む習慣のある方が、突然内痔核がさらに大きくなって、肛門内に押し戻すことができなくなることがあります。これは「内痔核の嵌頓(かんとん)」といわれるもので、激痛をきたし、緊急手術になることがあります。
直腸肛門外来のご案内
亀田総合病院 消化器外科部長 角田明良