お知らせ
新型コロナウイルス感染症から学んだ働き方改革と町おこし (亀田総合病院長 亀田信介) 2020/05/01
亀田総合病院長
亀田 信介
今年は台風など大きな災害のない年になってほしいと願いながらお正月を迎えた方が大勢いらっしゃったことと思います。しかし新年早々、新型コロナウイルスによる感染症の流行という大問題が発生いたしました。中国武漢に始まった感染症が、中国全土からアジア、さらに全世界に広がり、世界は大混乱に陥りました。
当院では、1月29日に武漢から政府チャーター機の第1便で帰国され、勝浦ホテル三日月に収容隔離された170名あまりの方々の健康チェック、感染管理対策、PCR陽性者の隔離入院といった初期対応を行いました。その後は、地域の過剰な反応や不安を取り除くために講演会などによる啓発活動を行うなど、地域の混乱を避けるための様々な活動を精力的に行いました。
しかしながら新型コロナウイルスが各国で広がりを見せる中、日本政府の対応もしばしば合理性を欠き、社会システムが混乱しました。突然、日本中の小学校から高校までが休校となり、出勤できなくなる子育て中の方や、そのために人員不足となり業務の縮小をしなければならない企業をはじめ、オイルショックの時を彷彿とさせる、デマ情報によるトイレットペーパーやティッシュペーパーの買い占めが原因の品不足、中国を中心としたサプライチェーンの崩壊による製造業への影響、人々の移動制限による経済活動の縮小など、まさに国難といえる状況となりました。
そのような中、一部の企業では、出勤を控えさせ大規模な自宅でのテレワークに切り替えました。当然、テレワークが可能な業種は限られるかもしれませんが、実際にテレワークに切り替えた方々とお話をすると、会社のコンピューターが大量のアクセスを処理できないといった、解決しなければならない問題はあるものの、今までは無理だと思っていたことが問題なくできることが解り、さらに会議などの時間も短縮され効率化されることが多かったと伺いました。
少子化、東京一極集中が大問題となっている現在、出生率の低い東京で、小さな家に住み、片道平均70分以上の通勤時間をかける生活が果たして豊かといえるのでしょうか?通信も5G(第5世代移動通信システム)の時代となります。今回の経験が、テレワークや遠隔診療を駆使し、より豊かで効率的な社会を目指すきっかけになるのではないでしょうか?豊かな自然と家族に囲まれながら仕事をし、週1~2回会社に出勤するといったような働き方が可能になれば、南房総の価値は急上昇する可能性があります。テレワークで仕事をする家族のクラスターを南房総に築いてゆくのはどうでしょうか。
今こそ通勤時間の無駄をなくし、コミュニケーションの能率を上げ、生産性の高い抜本的な働き方改革に挑戦すべき時なのかもしれません。当然、医療や介護の世界は多くの業務がテレワークでは難しいでしょう。しかし、一部の管理事務作業や、今後医師からタスクシフトする事務作業などは可能かもしれません。
病院では無理だと決めつけずに、固定概念を捨て、何ができるかを考える時だと思います。皆様の柔軟な頭と、現場の知恵で可能なことからスタートしてゆきたいと思います。
※ | この原稿は2020年3月末に書いています。 |
---|