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国民皆保険制度の曲がり角で (亀田クリニック院長 亀田省吾) 2018/03/01

亀田クリニック院長
亀田 省吾

わが国が今後急激な人口減少社会に突入することはご存知だと思いますが、特筆すべきは、このことが生産者人口の減少を意味し、後期高齢者人口は今後も当分の間増加するということです。つまり社会保障の財源(GDP)は減少し、医療・介護費用は増加していくということを意味しています。更に、現在進められている働き方改革の中で、医師も労働基準法に沿った働き方が求められています。日本の医療は低コストで世界の最長寿国になったことで、世界各国から注目されてきました。これには様々な理由があると思いますが、医師をはじめとした医療者の献身的な働き方の上に達成できた部分も大きいと思います。

医療や介護を必要とする人が増えるにもかかわらず、医療者の数があまり増員されず、更に医療者の労働時間が制限される中で、どのように医療費抑制政策を進めるのでしょうか? また、どうやって医療の質を担保し、向上させてゆくのでしょうか。この答えをこれまでの延長線上に見つけることは困難です。

医療制度は国によって様々です。とりわけ最も資本主義的医療制度を有するアメリカは、医療水準は世界屈指ですが、一日の入院費だけで30万円以上が当たり前というほど高額なため、4,000万人以上の医療保険未加入者が大きな社会問題となっています。逆にイギリスやカナダなど社会主義的医療制度では、救急以外の疾患での受診はアクセスが制限されていることや、手術まで数ヶ月から1年以上待たされることなどが問題となっています。

日本が戦後に進めてきた国民皆保険制度は、低コスト、アクセスフリー、基本的にはほぼ全ての医療サービスをカバーするという建前で行って来ました。しかし急激に進歩する医療や高額な治療、薬剤を全てカバーすることは困難となって来ました。今後は新たな財源の確保、医療アクセスのあり方、診療方法など、様々な角度から医療サービスの抜本的な見直しを行い、可能な限り効率的で質の高い医療提供のあり方を追求して行く必要があります。

加えて、近年では医療訴訟などに対応するため、医師が記載しなければならない書類等が増え大きな負荷となっています。また、ISOやJCI等の医療の質の評価に対応するためにカルテ記載をはじめ、診療以外の事務作業も増え続けています。確かに、医療の質の確保や安全管理上、きちんとした情報記載やトレーサビリティーは大変重要です。そこで、これからは、医療者の負担を軽減しつつ、医療の質を向上させていくために、急激に進歩しているAI等のIT技術を駆使することや遠隔医療の推進を図るべきでしょう。限られた人的資源を最大限効率的に活用することこそ、超長寿社会に突入した日本の医療サービスが世界から注目され続け、ひいては国民の幸せにつながるのではないでしょうか。

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